この映画はラブロマンスです。
当然ながら、主人公は二人。男と女です。
ちょっと違うのは、
彼らにとっては、
これからの未来よりも
これまでの過去の方が長かったということです。
見方を変えますと
普通、恋愛というものは
二人の旅の始まりですが、
彼らの恋愛は長い旅路の終わりを意味しているかのようです。
旅から帰ってうちが一番というところでしょうか。
初めてやってきたのに
なぜか懐かしい玄関というのもあるかもしれません。
レコード会社のオーナーを筆頭に、ヒップ・ホップ音楽界の大物として活躍中のハリー・サンボーン(ジャック・ニコルソン)は63才、もちろん結婚歴なしの独身。しかも、彼の恋愛の御相手は30歳以下の女性、いつも自分の齢などおかまいなし。親子ほどの歳の差などなんのその。
その相手の女性は、脚本家、エリカ・ジェーン・バリー(ダイアン・キートン)です。脚本が一本仕上がると別荘が買えるほどの収入になる超売れっ子です。
このまさにプレミアムブランドのような二人は、エリカの別荘で初対面します。その時紹介されたハリーの肩書は、なんと「エリカの娘・マリンの恋人」でした。セレブな夕食の夜、マリンの部屋にいた彼は、バイアグラの副作用で心臓発作を起こします。エリカは必死に人工呼吸をおこない、その甲斐あってハリーは事なきを得ます。この時のマウストゥマウス。目的は違えどもやっぱり口づけではあったのです。
帰還の長旅の前にしばらくの安静が必要と診断され、エリカの別荘に留まることになります。
娘の恋人を受け入れようと努めるエリカですが、「自分より年上の彼がなぜ娘と・・・」と気になるのは致し方ありません。エリカの広い別荘も、そんな好奇心には歯が立ちません。二人の発展はいとも簡単にアバンチュールを迎え入れます。仕事に対しては情熱的で、妥協のない歩みを重ねてきた似たもの同志の二人でしたが、その夜、それぞれのセオリーを覆します。ハリーは「事の後には帰ってもらってひとりで寝る(アバンチュールはあくまで遊び)」。エリカにとっては、夫の浮気によって離婚して以来のアバンチュールでした。お互いに4時間以上は眠れない体質だと思い込んでいましたが、二人の夢のベッドは、なんと8時間を飛び越えました。そこから、老いらくの火遊びは、恋愛として始まっていくのでした。しかし、これまでの彼らの生活スタイルは、まるで生活習慣病のように恋の始まりを妨害していきます。さらに、青年心臓外科医、ジュリアン・マーサー(キアヌ・リーブス)を交え、三角関係が成立してしまいます。
遊び人が遊びの中で本物を見つけてしまい、心の底から狼狽し、旅に出ます。老いた乙女はプレイボーイをあきらめようと懸命に仕事に打ち込みます。
「結婚適齢期」ということはよく言われますが、これは結婚するのに適した頃というのを指しています。これは言われつくした感があるのですが、
「恋愛適齢期」
というとさあ、どうなんでしょう? 純愛というのは意外なところに隠されているのかもしれません。
家庭生活も長きに及んで、
倦怠期
という言葉が軽くなっているあなた!
ぜひこの映画を御覧ください。
恐ろしいほどの特効薬になること
請け合いです!
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