秘密指令S(Department S '69~英国 )

 この物語は、パリの国際治安組織・インターポールからの指令で三人のエイジェントが、摩訶不思議な事件の解決に向け奔走するというものです。

 

 前回のお題に引き続きまして、忘れられている前世紀の海外ドラマを取り上げてみました。まるでばらばらに砕けたDNAのかけらのごとくに、頭の隅に残っている記憶の一片を発掘するかように取り出して、その薄れた情報をもとに捜索を行うという取り組みでした。

 

 私の発掘したかけらは、三人のうちの一人が口髭をたくわえた小説家で名前をキングといったこと、何話めかの副題が「リスボンより愛をこめて」だったことの3つだけでしたこの手の番組には珍しく午後8時の放送だったことでした。この番組に関してはほとんど見たと思います。逆にそれ故に忘れ去ってしまったのでしょう。

 小説家のエージェント・キングと「リスボンより愛をこめて」の副題によってのチャレンジでした。キングの顔はおぼろげに覚えています。そのキャラは、ヒッピー風の髪形、口髭、痩身のスーツ姿で、まるでシュール・リアリズムを体現するかのようで、シャーロック・ホームズと並ぶ英国紳士の象徴として、私の中にインプットされていました。

 

 それでもネット検索は難航しました。当時、このようなドラマはかなり多かったのでしょう。ウィキペディアさえもありませんでした。視覚の記憶を頼りに画像検索をしてみました。それでもキングの顔は現れません。古いドラマの題名を集めた画像が出てきました。その中に、「秘密指令S」という題名がありました。そして、ようやく私のタイムトンネルは扉を開いてくれたのでした。


 前回の「プリズナーNo.6」は、まったくの近未来SFとしてありましたが、このドラマは当時の時代背景を、そのまま過ぎるほどにあらわしているので、エネルギッシュな雰囲気が満ち溢れています。それゆえ古臭いはずの、ファッションなども現代からすると、新鮮な雰囲気に感じられます。

 

 

 それでは三人のエージェントを紹介しましょう! 


NO.1、ジェイソン・キング(Peter Wyngarde)、推理小説家。代表作は「マーク・ケイン」。豊かな想像力が武器。


NO.2、スチュアート・サリバン(Joel Fabiani)、高い運動能力で事件にアタック。


NO.3、アナベル・ハースト(Rosemary Nicols)コンピュータープログラマー,事件を科学的に裏付け調査。  

 

 ストーリーとしては、キングのキザな雰囲気が最初は鼻につくのですが、それとは裏腹の勇猛果敢さがいかにも心地よく感じられます。有言実行は清々しいものです。そして、三人三様で、めちゃくちゃな三人なのですが、それがかみ合ったとき、みごとに事件が解決していきます。仲が悪そうでも、信頼だけは維持されているというのが、非常にさわやかです。各エピソードの題名は、キングの劇中で書いている探偵小説、「マーク・ケイン」の題名になっています。 このドラマのスピンオフとして、「作家探偵ジェイソン・キング」が続いて制作されました。メディアとしては非常に希少なのですが、ぜひ、探してみてください。


 未来の感じられない現代、自らのライフスタイルを維持するために、内面から自らを磨くというのは必然なのかもしれませんね。

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コメント: 1
  • #1

    tadasane-sakamaki (月曜日, 18 3月 2013 00:20)

    Ps.最後の締めの部分が、少々強引に感じましたので、ちょっとだけ付け加えたいと思います。

    60~70年代は戦争の傷跡が、癒えないまでも、ようやくふさがり始めて、それゆえに立ち上がる勢いが芽吹き始めた時代であったと言えるでしょう。

    敗戦の自己不信は、徐々に自信として成長するさまがありました。

    そんな勢いの中で、誰もが個性を主張するスタイルが流行していました。「オタク」という言葉がまだ存在していなかった頃の話でしたが、ある意味ではオタク発祥の時代ということもできるでしょう。

    しかし、情報網の少ないこの時代、その個性を磨くことは大変なことだったのです。そして、困難を潜り抜けた個性派はステータスとして称賛されました。

    逆行的ですが、今度は個性の創出をはかりながら、そのエネルギーを作り出すということが問われているのではないでしょうか。

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