JOHNNY ENGLISH (ジョニー・イングリッシュ/'03)

 007シリーズのパロディとして位置づけられているのですが、お笑いコメディといったおちゃらけ感はそれほどありません。ローワン・アトキンスの出世作、「Mr.Bean」のときのような見た目の可笑しさというものは使わずに、シリアスな状況下での失敗から笑いを作り出そうとしているようです。それゆえにお笑い風の見た目の可笑しさの演技はあまりなく、すべてシリアスな芝居をきちんと行っています。セットも似ていればいいという、安っぽいものではありませんし、本物のアストンマーチン(ボンドカー)も登場して、映画としてはきちんと成立しています。パロディ映画独特の、いわゆる「チャチイ」というところがないのです。主人公のローワン・アトキンスにしても、そのダンディさでは、歴代のジェームス・ボンドに引けを取りません。敵役もジョン・マルコビッチが演じ、その演技にも軽さはありません。その中で主人公が、ヒーロー映画ではありえない失敗をしでかすのです。その落差によって、思わず笑ってしまいます。そして、また、シリアスな芝居によって、本筋に戻り、再び、落差の笑いが引き起こされるわけです。

 

 スパイ戦の現実では、映画のような作戦をとることはあり得るのでしょうが、すべてそれが成功するとは限りません。むしろ、失敗することの方が多いはずなのです。そのように考えると、パロディとして位置しているこの映画の方が、現実的ということが言えるのかもしれません。

 


 物語の設定にしても、シリアスを通すなら、スパイ映画として成立するほどの設定が組まれています。そのせいか、非常に格調高い映画に仕上がっています。パロディであるのは確かなのですが、コメディといえるかというと、それほど緊張感なしではいられない現実感があります。

 とにかく、チャンスがあればぜひご覧ください。おとぎ話のスパイ映画とはまた違った、充実感が得られること請け合いです。

 

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