Angel-A(アンジェラ)

 「欧米文化」と言うように、私たちはアメリカとヨーロッパをひとくくりにして捉えているようです。しかし、日本とヨーロッパとの距離感は、アメリカとのそれとは比べ物ならないくらい遠い印象があります。

 

 書店に行けば、英語の参考書は、中学生用、高校生用、受験対策、英会話と種類は無限と言えるほどでしょう。それに比べるとヨーロッパの言語の参考書は驚くほど数がありません。大学の語学の授業に取り入れらているフランス語やドイツ語の本でも、辞書まで入れて20冊前後。そのほかの言語では一冊あるかないかでしょう。

 

 テレビドラマにしても、日本で放送されているものの総ては英語のものだけです。報道などでは伝わってきているようですが、結果的には英語圏のメディアを経由してのものです。だから、ヨーロッパで流行っているドラマや音楽についての情報はほとんどありません。やはりヨーロッパ文化は遠くにあると言えるでしょう。日本をfar  east(極東)という言い方があるようですが、私たちにとって、ヨーロッパとはfar west といえるのかもしれません。

 ところで、Angel-A(アンジェラ)はフランスの映画です。先ほども言いましたように、ヨーロッパの現在については先入観というものが皆無なので、「日本では有り得ないことも、フランスではそうなのだろう」と、妙に納得してしまうのです。この物語の哲学的な一面がより際立って感じられるような気がします。

 

 自己を見失っている男と自らの存在を持たない天使。主観的断定性と客観的傍観性の相互関係、つまり、本来は一人の人格の中で行われていることを二つに分けて解かりやすくしているということでしょうか。めちゃくちゃ美人でセクシーな長身女性と、風采の上がらない男性とのおとぎ話は、自身の在り方を再確認するきっかけになってくれるかもしれません。 

 

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